サーバーには、メーカーが修理や部品交換を保証する「保守期限」があります。保守期限を過ぎた「保守切れ」の状態になると、故障しても修理を受けられなかったり、セキュリティ更新が止まったりと、業務停止や情報漏えいにつながるリスクが高まります。
本記事では、保守切れとは何か、サーバーの保守期限が5年前後とされる理由、保守切れによるリスク、延長保守・リプレース・クラウド移行などの対応方法を解説します。保守体制を見直すタイミングを迎えている企業は、ぜひ参考にしてください。
保守切れとは、メーカーが定めた保守サポートの期間が終了し、修理・部品交換・技術サポートなどを受けられなくなった状態のことです。保守終了を意味する「EOSL(End of Service Life)」と呼ばれることもあります。
保守切れになっても、サーバーがすぐに停止するわけではありません。しかし、故障や障害が起きたときにメーカーへ頼れなくなるため、復旧できるかどうかが自社の対応力や部品の確保状況に左右されるようになります。
サーバー保守とは、サーバーを常に安定して稼働させるための管理業務のことです。保守の対象となるサーバーは、Webサーバーやアプリサーバー、データベースサーバーなど、多種にわたります。
企業などが管理しているサーバーに不具合や障害が生じた場合は、業務に支障が出る可能性があるため、保守担当は速やかに復旧作業を行います。ハードウェアの修理や部品交換はメーカーの保守契約に頼る部分が大きく、その前提が崩れるのが「保守切れ」です。
サーバーの「期限」には、ハードウェアとソフトウェアで異なるものがあります。混同しやすいため、以下のように分けて把握しておきましょう。
| 用語 | 意味 | 影響 |
|---|---|---|
| 販売終了 (EOL) |
メーカーがその製品の販売・出荷を終えること | 新規購入や増設ができなくなるが、保守は継続される場合が多い |
| 保守終了 (EOSL) |
ハードウェアの修理・部品交換などの保守サービスが終わること | 故障時にメーカー修理を受けられなくなる(いわゆる保守切れ) |
| OSのサポート終了 | OSやソフトウェアの更新プログラム提供が終わること | 新たな脆弱性が見つかっても修正されなくなる |
ハードウェアの保守期限とOSのサポート期限は、必ずしも一致しません。サーバーの保守切れ対策を考える際は、両方の期限を確認することが大切です。
サーバーの保守期限とは、メーカーの保守サポートを受けられる期間のことです。サーバーは構築から永続的に利用できるわけではなく、製品ごとに保守期限が設定されています。
保守期限の考え方はメーカーや製品によって異なります。たとえば、NECのExpress5800シリーズでは、ハードウェアのサポート期間を原則として購入日から5年間(補修用部品の保有期限まで)としています。富士通のPRIMERGYでは通常の保守サポート期間を5年間とし、長期保守に対応したタイプでは最長10年間の保守を提供しています(対象機種や契約条件あり)。
このように、多くのサーバーでは保守期限が5年前後に設定されています。保守期限は型番ごとにメーカーのWebサイトや保守契約書で確認できるため、導入時だけでなく、運用中も定期的に確認しておきましょう。
ハードウェアの保守期限とは別に、サーバーOSやミドルウェアにもサポート期限があります。たとえば、Windows Server 2016は、2027年1月に延長サポートの終了が予定されています。
ハードウェアの保守が残っていても、OSのサポートが終了するとセキュリティ更新が受けられなくなります。サーバーの更新計画は、ハードウェアとOSの期限を並べて立てるのが基本です。
サーバーの保守期限が5年前後に設定される背景には、主に以下の3つの理由があります。
サーバーは24時間365日稼働することが多く、ファンやハードディスク、電源ユニットなどの部品は使用年数とともに劣化します。一般的に、使用開始から5年を過ぎると故障や障害が増えやすいとされており、メーカーはこの時期を目安に保守期間を区切っています。
メーカーは製品の製造終了後も、修理用の部品を一定期間保有します。しかし、古い製品の部品をいつまでも在庫し続けることは難しく、部品の保有期限に合わせて保守期限が設定されます。保守期限を過ぎると、部品の在庫がなくなり修理そのものができなくなる可能性があります。
税法上、サーバーは「器具及び備品」の「電子計算機」に分類され、パソコン(サーバー用を除く)の法定耐用年数が4年であるのに対し、サーバーを含む「その他のもの」は5年と定められています。
法定耐用年数は減価償却の期間を示すもので、5年で物理的に使えなくなるという意味ではありません。ただし、会計上の償却が終わるタイミングと保守期限が近いことから、5年をサーバー更新の目安として計画する企業が多くなっています。会計処理の詳細は、税理士などの専門家に確認してください。
保守切れのサーバーを使い続けると、以下のようなリスクが生じます。
保守切れになると、ハードディスクやマザーボード、メモリなどが故障しても、メーカーの修理や部品交換を受けられません。メーカーのエンジニア派遣も受けられなくなるため、部品の調達先探しから始めることになり、復旧までに長い時間がかかるおそれがあります。
OSやファームウェアのサポートも終了している場合、新たに見つかった脆弱性に対する修正プログラムが提供されなくなります。IPA(情報処理推進機構)も、サポート終了後の製品を使い続けると、脆弱性を悪用されて情報漏えいやサービス停止などの被害につながるおそれがあると注意を呼びかけています。
ストレージの故障に対応できなければ、保存しているデータを失う可能性があります。基幹システムやECサイトなどが停止すれば、売上の機会損失や取引先からの信頼低下など、事業そのものへの影響も避けられません。
保守切れのサーバーは障害が起きやすく、起きたときの対応も手探りになりがちです。夜間や休日に障害が発生すれば、少人数の情シスやインフラエンジニアが原因の切り分けから復旧まで抱えることになり、特定の担当者に負担が集中する原因にもなります。
保守切れへの対応方法は、主に以下の5つです。どれか1つを選ぶというより、サーバーの重要度や残りの期間に応じて組み合わせて検討しましょう。
| 対応方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 延長保守 | リプレースまでの準備期間を確保したい | 対象機種・期間に限りがあり、費用がかかる |
| 第三者保守 | メーカー保守終了後も一定期間使い続けたい | OSやファームウェアの更新は対象外の場合がある |
| オンプレミスでのリプレース | 自社内でサーバーを管理し続けたい | 機器選定・移行・動作検証に時間とコストがかかる |
| クラウド移行 | ハードウェアの保守から解放されたい | OSやアプリケーションの運用は自社側に残る |
| MSPサービスの活用 | 現行サーバーの監視強化から移行後の運用まで、体制ごと整えたい | 監視対象と対応手順を共有しておくと立ち上げがスムーズ |
メーカーによっては、標準の保守期限を過ぎても有償で保守を延長できるサービスを用意しています。長期保守に対応したモデルを導入時に選んでおく方法もあります。延長保守は、リプレースやクラウド移行の準備期間を確保する手段として活用するのが効果的です。
第三者保守とは、メーカー保守が終了した機器を、メーカー以外の保守事業者が引き継いで修理・部品交換を行うサービスです。次の更新までの「つなぎ」として利用されます。ただし、ハードウェアの修理には対応できても、OSやファームウェアの更新は受けられない場合があるため、セキュリティ面の対策は別に考える必要があります。
保守期限を機に、後継機種のサーバーへ入れ替える方法です。これまでの運用方法を大きく変えずに済む一方、機器選定や予算確保、データ移行、動作検証などに時間がかかります。新しいサーバーにも再び保守期限が来るため、次回の更新まで見据えた運用体制づくりが欠かせません。
保守切れをきっかけに、オンプレミスのサーバーをクラウドへ移す企業も増えています。クラウドではハードウェアの保守をクラウド事業者が担うため、機器の保守期限に悩まされることがなくなります。
ただし、AWSの責任共有モデルでは、IaaSを利用する場合のゲストOSの更新やセキュリティパッチの適用は利用者側の責任とされています。クラウドに移行しても、監視や障害対応などの運用業務はなくならない点に注意しましょう。
MSPサービスとは、ITシステムの監視や保守運用を専門事業者に委託できるサービスのことです。サーバーの保守切れは、ハードウェアを入れ替えるだけでなく、誰がどこまで運用を担うのかを見直すタイミングでもあります。
MSPサービスを活用すれば、24時間365日の監視や障害の一次対応を専門のエンジニアに任せられます。保守期限が迫るサーバーを使い続ける期間の監視強化から、リプレースやクラウド移行後の運用まで、環境が変わっても一貫した体制で支えてもらえるのがメリットです。インフラの設計・構築から監視の導入、運用フローの整備まで一貫して依頼できるサービスもあり、少人数の情シスでも安定した運用体制を整えやすくなります。
また、クラウド移行後はサーバー台数を増減しやすくなる一方で、監視対象も変わりやすくなります。サーバー台数に左右されない定額制の料金体系を採用しているサービスを選べば、台数が増えてもコストの見通しを立てやすくなります。
保守切れへの対応は、期限が迫ってから動くと選択肢が限られてしまいます。保守終了の1年前、遅くとも半年前までには対応方針を決めておくのが目安です。以下の流れで計画的に進めましょう。
保守期限の管理を特定の担当者だけに任せていると、異動や退職をきっかけに期限を見落とすおそれがあります。期限の一覧を共有し、毎年見直す仕組みを作っておくと安心です。
サーバーの保守期限は5年前後に設定されることが多く、保守切れになると故障時の復旧が難しくなるだけでなく、セキュリティ面の脆弱性も高まります。延長保守やリプレース、クラウド移行で機器の問題を解決しても、監視や障害対応といった運用の負担は残ります。
特に24時間365日の監視が必要な業種では、自社の情シスやインフラエンジニアだけで対応し続けるのは負担が大きくなりがちです。MSPサービスを導入すれば、運用監視を専門事業者に任せられ、社員の負担を減らしながらサーバーを安定して守る体制を整えられます。
当メディアでは、「サーバー台数や監視対象が多い」「オンプレミスとクラウドが混在している」「厳格なセキュリティ要件がある」など、IT運用体制から選べるおすすめのMSPサービスを紹介しています。保守体制の見直しや委託先の比較に役立ててください。
運用体制から選べるMSPサービスを紹介する当メディア『とまRun365』では、サーバー保守の重要性などの基礎知識を紹介しています。ぜひ、併せてチェックしてください。
Q メーカー保守が切れたら、サーバーはすぐ使えなくなりますか?
A
保守期限が切れても直ちに停止するわけではありませんが、故障時の部品交換やメーカーサポートを受けにくくなります。
障害が起きてから対応方法を探すのではなく、事前に方針を決めておきましょう。障害時に誰が一次対応と復旧作業を担うのかもあわせて決めておくと、いざというときに慌てずに済みます。
Q サーバーの保守期限はどこで確認できますか?
A
メーカーのWebサイトで型番から確認できるほか、保守契約書や購入時の資料にも記載されています。
保守期限の起点は「購入日」や「販売終了日」などメーカーによって異なるため、型番ごとに正確な期限を確認し、一覧で管理しておくことが大切です。
Q 保守切れのサーバーを、リプレースまで使い続けてもよいですか?
A
業務への影響や予備部品の確保状況によって判断が変わります。
停止時の影響が大きいサーバーは、延命期間を明確にし、バックアップや代替環境を用意したうえでリプレースを進めることが重要です。使い続ける期間中は監視を強化し、障害の予兆を早めにつかめるようにしておきましょう。
Q メーカー保守終了後に、第三者保守を利用する方法はありますか?
A
対応機種であれば利用できる場合があります。
ただし、ハードウェア修理は対応できても、メーカーのファームウェア提供やソフトウェアサポートは受けられない場合があるため、対応範囲を確認しましょう。第三者保守は次の更新までの「つなぎ」と位置づけ、リプレースやクラウド移行の計画とあわせて検討するのがおすすめです。
Q 保守切れで特に注意したいのは、ハードウェア故障だけですか?
A
部品調達だけでなく、OSやファームウェアのサポート終了、セキュリティ更新の停止にも注意が必要です。
ハードウェアとソフトウェアの期限を分けて確認しましょう。OSのサポート終了後は新たな脆弱性が修正されなくなるため、情報漏えいなどのリスクが高まります。
Q サーバーのリプレースは、保守期限のどのくらい前から考えるべきですか?
A
機器選定、予算確保、データ移行、テストに時間がかかるため、保守終了の1年前、遅くとも半年前には対応方針を決めておくのが目安です。
業務への影響が大きいほど、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。移行後の監視や障害対応を誰が担うのかも、計画の段階で決めておくとスムーズです。
※1 金融機関などで求められる、厳格なセキュリティ基準のこと。参照元:TOPPANエッジITソリューション公式HP(https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2024/02/newsrelease240220_1.html)
※2 クラウドサービス向けの国際的なセキュリティ認証のこと。参照元:TOPPANエッジITソリューション公式HP(https://www.tsi.toppan.com/service/reason/center/index.html)